リベラルアーツ(一般教養)が、想像力と勇気を養う。

リベラルアーツ(一般教養)シリーズ初回に「海外との接点を持つ」「人生の方向性を決める」2点において一般教養が必要だと書きました。

リベラルアーツ(一般教養)は、経験とブレンドされるとジワリと効いてくる

いずれ必要になる、という姿勢で書いたのですが、若い皆さんが自分事として実感を持ちにくいかもしれない、と感じたので、書き足します。

やみくもな暗記に意味はない

僕たちは多かれ少なかれ、詰め込み型の教育を受けてきました。これは、仕事を処理することを重視したを育てることが狙いだったのだと察します。

詰め込み型教育とは、パターンを教え込む教育であり、インプットに対して正しいアウトプットを返す生徒が優秀とされます。

言い換えれば、高度に細分化されたパターンを記憶して、それを引き出せる能力が重宝されました。

マニュアル的で、属人的な仕事が豊富にある限り、これは有益なアプローチだと思います。なぜなら、決められた仕事であっても、そこそこの価値があるからです。

検索アルゴリズムには勝てない

しかし、Googleが情報を整理し始めるようになり、状況が変わりました。知識はその場で、無料で手に入れることができます。

重箱の隅を突くような質問だって、瞬時に答えてくれます。

例えば「太陽系で一番高い山は?」に答えられる人は少ないと思います。

しかし、Googleで検索すると:

ご覧のとおりです。

リンクに飛ぶまでもなく、最も関連性が高いであろう情報のサマリーが抜粋表示されます。

答えはオリンポス山。

火星にあって、高さは25000メートル、楯状火山、画像と位置情報・・・直接的な解答に追加情報までいたれりつくせり。検索にかかった時間は0.52秒。

この技術が無料で使える状況にあって、世界中の首都名を暗記してドヤ顔するのは、前時代的に見えます。

人間の知識は自動更新されない

身も蓋も無い話ですが、暗記した情報が正しくなかった、というケースもあります。

恐竜ティラノサウルス・レックスと聞くと、僕世代ではゴジラのように直立した姿を想像してしまいます。しかし最新のイメージではやけに頭が大きく、体を水平に保っています。

江戸時代の身分制度は「士農工商」と学びましたが、今の教科書からは撤廃されて、「侍と町人」という区分が現在の定説であるようです。

検索データベースは自動的に上書きされますが、人の記憶はそうも行きません。

そもそも人が暗記したものは「ずっと変わらない」か「忘れ去られる」の二者択一で、アップデートされることはまずありません・・・興味を持って勉強を続けない限りは。

哲学が偉大な理由

前置きが長くなりました。

ひとくちにリベラルアーツと言っても色々な学問があるので、哲学を例にします。

言っておきながら恥ずかしいのですが、僕は哲学の講義を履修したことがありません。このシリーズをきっかけに「ソフィーの世界」と「史上最強の哲学入門」の2冊をゆっくり読み始めた程度です。

これまでの感想を端的に言うと、かなり面白いです。

偉人の名前が続々と出てきますが、具体的に誰がどんな説を唱えたか、については暗記していません。

僕が感心するのは、学問(特に自然科学)というコンセプトが確立されていない時代に、想像力と観察力をもって謎に立ち向かった、過去の哲学者達の姿勢です。

「分からない。だから知りたい。」

身の回りの事象、自己や他者の存在を説明するために、ありとあらゆる思考を試みてきたの一連の流れが、哲学という学問になっている。

これが現時点での僕の浅い解釈です。

分からないから無視する、で良いのか?

いや、そんな小難しいこと言われても、と感じる人もいます。

でも、そこを無視し続けると社会の発展はない、と思います。

学生の中にはITが苦手な人もいます。プログラミングができるとかいうレベルではなくて、クラウドサービスを使ったり、パソコンに触れることすら苦手意識を持つ人も居ます。

理由を聞くと「難しそうで、使ってる自分が想像つかないから」だそうです。

気持ちは分からなくもないです。

また日本の新卒者の中では、B2BよりもB2Cの企業が人気になりがちだそうです。理由は「自分の生活に慣れ親しんでいるから」だそうです。

直感的でわかりやすいものに飛びついてしまう心理も分かります。

しかし、世の中は必ずしもわかりやすいものだけで回っているわけではありません

というか、世界を変えるような昨今の新興企業は、最初はぱっと見よくわからなかったり、理解されにくいことをやったりしています。

僕が学生としてアメリカに渡ったころ、Googleはまだ赤字だったと思います。

広告収入モデルは存在しましたが、Googleに未来は無いと断言するアナリストは数多くいました。GoogleによるYoutube買収は無駄遣いだと叩かれました。

スタートアップだったAmazon.comは、誰かが比喩として挙げると失笑が起きる、まるで冗談のように語られていました。

これら企業の現在の価値について語る必要は無いと思います。

あざ笑っていた人たち、無視していた人たちに共通して言えるのは、想像力と、勇気が足りなかった、ということになるのではないでしょうか。

勇気をもって追求する姿勢は、ビジネスも同じ

数億人と人が集まる検索エンジンで、結果と連動した広告を打つと効果的である(Google)。

世界中の物を販売するデジタルプラットフォームで得たノウハウとリソースをサービスとして提供する(Amazon)。

今となってはこんなこと当たり前です。でも、そうじゃない時代においては、人に笑われるような代物だったわけです。

今、全世界で語られているブロックチェーンやトークンエコノミーは、今後の世界の有り様を変える可能性があると言われています。

ポシャる可能性もあります。でも、20年後には「法定通貨しか持ってないの?効率悪くね?」とか言われているかもしれません。

何れにせよ、成功して大きくなるのは、今は無く、今後あるべきものを考え抜いて、作って、勇気を持ってリリースする人だけです。

付け加えるとすれば、失敗しても、それを続けた人たちが生き残ります。

最後に

学生にやりたいことを聞くと「企画」「経営」「マーケティング」などが帰ってきます。

ですが、手を動かしていることが想像できるような具体性を持って返答できる学生は稀です。

教養が単体で役に立つことはまずありません。しかし、学ぶ姿勢を身につけることで、トライアル・アンド・エラー(トライ・アンド・エラーじゃないですよ)の習慣化につながります。

この習慣こそが身を一生支える財産になります。これに比べたら「いいくに作ろう」とか些末な知識です。

できることなら、一般教養を通じて、いろんな側面から未知を捉える人になってもらいたいと思います。

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余談ですが、知り合いの方がセールスフォース・ドットコムに営業職として新卒入社する、という報告を目にしました。

世界的な企業ですが、企業向けの顧客管理システムというのは、世の中の全ての人が知っている、というものではありません。競争も厳しいはず。

他にも選択肢があるなかでこの企業を選んだのは、そこで得たい具体的な何かを見出したからでしょう。

ここからは勝手な予想ですが、おそらくこの方は、ずっとセールスフォース・ドットコムには居続けない。

得るものを得たら、転職するなり、起業するなり、隠居するなり、自分でステップを決めて歩くのだろうな、と思います。

どれだけ一般教養を重視されたのかはわかりませんが、少なくともリベラルアーツ的な考えをお持ちなんだろうな、と推察します。

勇気ある人は、進む姿も悩む姿も美しいです。

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