共有経済①シェアリングエコノミーとは:インターンシップブログ

シェアリング・エコノミー(共有経済)という言葉が脚光を浴びるようになって数年。「シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」というベストセラーの影響も大きかったと思いますが、Uber(乗り物)・AirBnb(宿泊)・Taskrabbit(人手)などに続き、雨後の筍のようにシェアリングのスタートアップ世界中で乱立しています。日本ではメルカリが有名です。

シェアリングについて詳しい人も全然知らない人もいるでしょうが、俯瞰的に、シェアリングについて書いてみたいと思います。あくまで個人の一解釈ですが、お役に立てば嬉しいです。

シェアリングエコノミーとは

Wikipediaでは「共有の社会関係によって統御される経済を指す」と説明されていますが、なんのことだかわかりません。既存のサービスを崩壊させる、とか、所有するのではなく借りるとか、いろいろ解釈があると思いますが、僕の理解としては:

特定ニーズを満たす資源を再定義して、有効に分配するサービス

うーん、これでもイメージが湧きにくい・・・ムチャクチャ固いですね。ユニコーン*の代表格AirBnBを代表例に挙げましょう。民泊サービスのパイオニアとして、日本でも知名度は高いです。

(*ユニコーン=スタートアップのスター。一般に、評価額10億ドル以上の未上場企業。)

旅館やホテルは、法律で定められた規則(日本では旅館業法)のもとで運営される商業施設です。ここに民家は含まれません。でも、普段だれも使わない寝室があるならば、宿代わりに使わせてあげて、お礼を受け取ることは可能です。こうして民泊という概念が生まれます。AirBnbが再定義したのは「宿泊のための場所」という資源で、再定義した結果、従来の宿泊業に「民家」というオプションが加わりました。再定義は、多くのばあい選択肢の拡大をもたらし、結果として、いろいろと既成概念がユルくなります。たとえば・・・

提供者と顧客の同化

ホテル業は明確なB to Cで、通常この立場が逆転することはありません。しかしAirBnBでは、これまでゲスト(宿泊客)でしかなかった一般市民がホスト(受け入れ側)になります。これは恒久的な立場逆転ではなく、ゲストとして旅をしながら、同時にホストとして客を迎え入れることも可能です。

参入障壁の低下

単純に、ホテルを運営するには土地を入手し、施設を建設し、人を雇う必要があるので、相当な投資になります。しかしAirBnbホストになるのに大掛かりな投資は不要です。この違いは大きく、参入障壁がほぼ一般市民レベルまで引き下げられます。(もちろん無認可の問題はありますが、それは別の話。)

新旧プレイヤーが混在

実は、AirBnBというプラットフォームには、新しいホストだけでなく、昔から宿泊業を営んでいるプレイヤーも存在しています。2014年の4月〜10月の間、モバイル先進国を調査する旅に出たとき、現地の人の話を聞くためにAirBnbをフル活用しましたが、僕がAirBnb経由で予約した施設の半分は一般住宅ではなく、低価格のホステルでした 。全て民家にしたかったのですが、数十連泊という条件だと、ホステルが検索結果としてヒットすることが多かったのです。

市場価格の変動

参入障壁が低くなり、プロバイダーの数が増えると、サービス価格は下落します。売り手市場の企業にとっては大きなマイナスインパクトです。だからこそ既存の宿泊施設や業界団体は、民泊に反対姿勢を見せるわけです。

ほかにも沢山の変化が見られると思いますが、ひとまずこんなこんなところで。

優秀なシェアリングプラットフォームは、空気に徹する

予約サイト大手の楽天トラベルでホテルの予約をしようとすると、検索条件を打ち込んで、結果から気に入った宿を選び、クレジットカードで精算します。見事なまでに一方通行です。宿泊施設から連絡がくることは、ほぼありません。宿泊後、楽天トラベルで予約したことは覚えていても、ホテルの名前はあまり覚えていません。

AirBnbだと多くの場合、家主とメッセージでやり取りをすることになります。提供される情報が十分ではなかったり、家主のレスが遅かったりすることもありますが、僕はこれを楽しみます。結果として、僕は2年以上前にお世話になったホストの名前を覚えています。シンガポールではウェイン、ソウルではジェイク、ローザンヌではビッキー、ヘルシンキではジェーン。会社ではなく、人と取引をした、という意識が残っています。

記憶に残ったから良い、というわけではありません。人が関わるからこそ面倒なこともあります。ただ、体験として全く異なるものではあります。そして、利便性や、価格、コミュニケーション、すべてをひっくるめて利用したいと思う人が多く存在する、という事実があります。

ユーザ至上主義と、ITがそれを可能にする

グロースハックではよく言われることですが、ユーザに尽くす姿勢はサービス提供者に不可欠です。ユーザは移り気で、例えばウェブサイトにログインできなかったり、ページロードに時間がかかるというだけの理由で、一生そのサービスに戻ってこなくなったりします。UX(ユーザ体験)のスペシャリストが存在するのも頷けます。

僕の感覚ですが、優れたシェアリングサービスは、ユーザー(AirBnBだとゲストとホストの双方)のことを考え抜いた結果として、利便性、快適性を重視して、徹底的に邪魔をしないことを念頭においています。

条件入力、検索のしかた、コミュニケーションの撮り方など、最初からとてもシンプルでしたが、驚くほど頻繁にサービスに手が加えられています。中には改悪?と思われるようなものもありましたが、次第に使い勝手が良くなりました。当初感じられた「AirBnbに質問をしている」という感覚から、いつの間にか、ネットの向こうのホストとコミュニケーションをとっている実感がありました。これに加え、個人間取引で大きなトラブルになる可能性のある「お金の取引」の間違いが無いことも安心要素です。

目まぐるしく行われる実地テスト、リアルタイムの改善、オンラインの即時決済、宿泊管理台帳、地図APIとの連携、推奨金額を提示するアルゴリズム・・・これら技術的な側面の多くは、おそらく15年前でも想像することはできましたが、実現は難しかったでしょう。技術が進歩し、普及し、安価になったから今だからこそ達成できることが沢山あります。

「シェアリング」という言葉に感じる違和感

今更ですが、ここ数年、シェアリングという言葉に違和感を覚えるようになりました。たしかに自分の部屋や、車をシェアしているのですが、かならずしもシェアされているとは限らない・・・結果として「民家」ではなく「ホステル」に泊まっているのであれば、あるいはUberでタクシーを呼んだのであれば、それは既存サービス利用の高度化であり、共有という感覚から離れてしまうのです。

言葉として収まりが良いのは「オンデマンドサービス」なのですが、でもそれだと「NHKオンデマンド」のようにビデオ・オン・デマンドサービスのイメージが強い・・・。

冒頭で紹介した「シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」という書籍のタイトルですが、当初は名訳だと感じました。原タイトルの”What’s Mine Is Yours.” = 「私のものは、あなたのもの」は、なんだか台詞を間違えたジャイアンのようだし。

しかし時が経ち、当初の言葉に違和感を覚えるのも当然です。時代の異端であった共有経済の先駆者達も、先住民たちが無視できないほどに成長し、彼等と今は戦いながらも共存の道を探っている現状です。AirBnbがホステルをリスティングし、Uberと大手のタクシー会社が提携するというのは、自然な流れなのでしょう。ずっと現状が維持されるとは思えませんが・・・。

超メジャーな例を引き合いに出したので話が大きくなってしまいましたが、シェアリングの流れの勢いは衰えません。

次回は、シェアリングサービスの成功要因について考えてみたいと思います。

共有経済②シェアリング・スタートアップが成立する要因:インターンシップブログ

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