セレンディピティは、考えながら動く者に訪れる(インターンシップブログ)

数年前にセレンディピティ(serendipity)という言葉がネットや書籍で踊りました。「思いがけない、しかし幸運な出会い」という意味です。ことわざなら「棚からぼた餅」や「瓢箪から駒」が近いです。

セレンディピティとは?

定義はさまざまだと思うので、引用してみましょう。まずはOxford Dictionaryから。

The occurrence and development of events by chance in a happy or beneficial way
(幸運な、あるいは有益な出来事が偶然おきること)

つづいて、Wikipediaから。

The structure of serendipity: Serendipity is not just a matter of a random event, nor can it be taken simply as a synonym for “a happy accident” (Ferguson, 1999; Khan, 1999), “finding out things without being searching for them” …

セレンディピティの構造:セレンデピティとはランダムに発生するイベントではない。また単純に「嬉しい偶然」や「予期しない発見」と言い換えることもできない。

イノベーションやサイエンスの文脈で使われるセレンデピティは、Wikipedia日本語版の説明がとても近いのではないかと思います。

セレンディピティ(serendipity)とは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。

これが僕が使うセレンディピティです。

偶然を呼びこむのは、主体的な行動

「何かを探しているとき」というのがとても重要です。人は目的を持って行動すると、アンテナを立てて、様々な情報を五感で読み取ろうとしています。読み取った情報の中で、求めていた情報の他に、(特に探し求めていなかったけど)とても価値ある情報を拾うことがあるわけです。

逆に、ボーっとYoutubeを視聴しながら大きな発見をした、という経験は僕にはありません。

海外インターンにはセレンディピティが起きやすい

これまでPrepared Slidesのプロジェクトとしてシンガポールに5名、個人的なつながりで欧州に6名の日本人学生をスタートアップに送り出して来ました。

多感で無限の可能性を持つ学生には、思いがけない変化が起きます。ヨーロッパに送った6名のうち、4名は日本の大学を中退して働き続けることにしました。このうち2名は現地の大学 – ベルリン大学・ヘルシンキ大学 – に理系転向して入り直し、働きながら勤めています。人によっては(当然)親御さん猛反対されたそうですが、仕事に直結した専門的な勉強ができること、学費が安いこと(ヘルシンキ大学は無料です)など、合理的な理由で「説き伏せた」そうです。

びっくりするくらい、職場で何も出来ない自分がそこにいる・・・

実は欧州に残ることになった4名、当初悲惨でした(逆に最初からスムーズだった2人は研修期間後にキッチリ日本に帰国しました・・・なんでだろ?)職務経験はなく、英語も流暢に話すことが出来ない環境に独りぼっち。スタートアップ側もインターンの受入れに馴れておらず、研修プログラムは皆無。この状態から3ヶ月のうちに「採用したい」と思わせるほどの信頼を勝ち取るのは大抵な努力ではないかったと思います。

・・・だから、真剣に取り組まざるを得なかった

でも、なにも出来なかったからポイントを絞って集中して努力することができたと、皆さんいいます。壁にあたったインターン生(3ヶ月以上の長期プログラム)から相談を受けた当時、僕のアドバイスは単純なものでした。

1週間で1つだけ、業務をこなせるようになること。

簡単なことでOK。取り繕うこともできないほど出来ないのだから、まずは一番簡単なことからできるようになる。ただし、最速かつ正確に。たとえば、単純作業に思える「入力」を、課せられた1/2の時間で完璧にこなせるようになって、その成果を魅せつける。するとCEOはインターンの伸びしろを認めざるを得なくなるという戦略でした。

一番簡単なことができるようになると、自然に次を求めたくなるものです。コピペのショートカットも知らなかったインターン生が、投資家プレゼン資料の作成を任され、ミーティングに同行するにまで成長したのが、わずか2ヶ月半。CEOにビザサポートとストック・オプションを提示されるまでに3ヶ月半・・・景色はめまぐるしく変わりました。

苦しい環境で出会った人、かけられた言葉、生み出した手法などを一気に通り過ぎることで、気が付くと大きく軌道修正していたそうです。これもセレンディピティと言えます。

最初の一歩から始まる

逆境を乗り越えて・・・のようなことを書くと、彼らが特別強い心を持っていたように聞こえるかもしれませんが、そうでもないのです。

彼等もそもそもは日本で復学し、就職活動を経て日本の大手企業に入射する予定でした。そのまえに、ちょっとヨーロッパを経験してみたい、という程度の動機でした。それでも、その一歩を踏み出すことで思わぬ結果を残すことになるのです。

僕にとってもセレンディピティは重要です。とあるプロジェクトで偶然知り合った人たちとSSHPを立ち上げることになり、そのおかげで沢山の学生さんと知り合うことになりました。

プログラム化して第2回目の短期インターンシップSSHP2は8月24日~9/11の間、シンガポールが舞台です。今度はどんな偶然が待っているのか、楽しみです。