大学生の気になることに回答するエントリー。まずは頂いたお題から。
ゼミで後輩にフィードバックする難しさを感じています。
自分は経験を通して理解しているのですが、経験の浅い後輩に理解してもらう為にどうしたらいいのかと思います。
私も先輩からいろいろ教えていただいたことは自分で課題をやったときに実感できたことばかりでした。
もちろん経験を通してわかることもあるとは思います。
しかし、だからといってやってみないとわからないという言葉では済ませたくないと考えます。
効果的な説明ができればもっと彼らが成長する、また説明することは今後あらゆる場面で求められる、という点から相談しました。
今回は「後輩に説明する方法」です。指導する状況、多々ありますよね。
このお題、考えるのが比較的楽でした。相談文のなかでかなり方向性を見せてくれていたので。ポイントは、「自分で課題をやったときに実感できた」「説明することは今後あらゆる場面で求められる」の2つです。
ここまでわかっているなら、これらを後輩にやってもらえばいいのではないでしょうか?
理解のサイクル
学校で教わる知識はだれでも触れることができますが、それで学習が完結するわけではありません。
大まかに、アカデミックな理解(この言葉も曖昧ですが、ここでは「身につく」とします)とはゼロイチではなく、段階的に深まるものです。
わかりやすくするために、小学校の算数を例に挙げます。
- 原理:100 x 5 = 500(授業で)
- 事例:100円のパンを5つ買いました。お会計はいくらですか?(テスト)
- 応用:500円渡すから、パン2つと牛乳を買ってきて。おつりはあげる(おつかい)
- 教示:おつかいで利益を出した方法を、同級生に伝授する(伝承)
下に進むにつれて理解が深まるのがわかると思います。
お気づきかもしれませんが、上の(原則・事例)2つは状況と正解が予め用意されてます。一方、のこり2つ(応用・教示)は、生徒(子供)が自分で考えて工夫するものです。
この立場を、ゼミでの先輩、後輩の関係に当てはめると、下の図で説明できます。
緑と青の→が、アクションの方向です。原理の説明と事例を示すのが先輩の仕事で、あとは後輩による取り組みです。
先輩から後輩へのアクション
仕組みを説明する
第1段階では、先輩から後輩に対して知識を授けます。状況にもよりますが、できるだけわかりやすくするコツは「紙とペンを使って、絵を描きながら説明する」「ゆっくり話す」ことです。
事例を見せる(デモを行う)
例を挙げて説明しましょう。上記の「仕組みを説明する」と同じタイミングで行われることが多いですが、観念的には第2ステップです。
仕組みを踏まえながら、デモンストレーションを行います。
ここで大事なのは、事例の選び方です。シンプルで分かりやすい事例を挙げるように心がけて下さい。変数の多く難易度の高い挙げると、先輩としては気分がいいかもしれませんが、後輩は、混乱してパンクします。
もちろん、ペンで紙に手描きしながら。
後輩から先輩へのアクション
自分で事例を見つけてもらう
上記の時点で後輩もある程度理解しています。ただし、それは時間が経つと簡単に忘れてしまう程度の理解です。身につけてもらいたいと願うならば、主体を後輩にゆずらなくてはなりません。
先輩が出した事例から離れて、後輩に自ら事例を見つてもらいましょう。取りにいった情報は、与えられた情報よりも定着します。
説明してもらう
後輩が見つけてきた事例を、原則を踏まえて説明してもらいましょう。自分が説明したときのように、手描きで説明するようにアドバイスして下さい。
この一連の流れ、以前書いた「抽象化」に通じるものがあります。
要約すると、事例は、経験を経て抽象化されることで身につきます。原則とは抽象化された概念のことですが、身につけるためには手を動かして、自ら体験する必要があるのです。
写真の撮り方を勉強しても、シャッターを切らないと上手にならないのと一緒です。
最後に、後輩の説明を聞く上で重要なポイントを。
- 集中すること:当たり前のようで、意外とできません。ついつい「ながら」で聞いてしまうのです。正面でも横でも、相手の方を向いて聞きましょう。
- 笑顔で:テストしているわけではなく、人の理解を伸ばそうとしているわけですから、リラックスさせてください。普段の関係がフレンドリーな場合は、逆にピリッとさせましょう。
- 褒める:褒められるのを本気で嫌う人は、まずいません。大げさなくらいに褒めてください。ただし、嘘はいけません。誇張する場合でも、根があるものを。
- 正しく指摘する:本筋に関わるような不明瞭、不足、誤解点は、冷静に指摘してください。細かい部分については、いっそ無視してください。
「相手に正対する」「紙に書く」「ゆっくり話す」「事例を挙げて説明する」「自分で説明してもらう」「指摘する」・・・ここに説明したことは、僕がSSHPのチームレビューで心がけていることです。
SSHP修了生のみなさんは僕のレビューを現地で15回くらい受けています。
いい機会なので、業務日報を読み返して、いろいろ思い出してみて下さい。