Premise TV:ニッチな製作者とコアなファンを結ぶ動画サービス(創業者インタビュー)

大学生がシンガポールのスタートアップで経験を積むSSHP第8期

映画業界に旋風を巻き起こすスタートアップ・Premise TVの創業者ふたりにインタビューしました。

Premise TVとは

  • 動画配信と、クラウドファンディングの循環プラットフォーム
  • エッジの効いた作品を持つ映画製作者と、ファンをつなげる
  • 映像ディレクターRay Pang氏(CEO)と、テック畑のWan Ng(CTO)が創業

設立の経緯

>>>   まずは設立の経緯をおしえてください。

Ray Pang (Ray):僕はシンガポールでフィルム制作を学んで、一貫して映画業界にいます。主にCMやプロモーションの動画を手がけてきました。その合間に講師もしています。監督業一本で生活するのは難しいですから。

>>>   狭き門というか、厳しい業界なんですね。そんな経験がPremise TVにつながったと思いますが、なにかきっかけがあったのでしょうか?

Ray:オーストラリアに留学したことが大きかったと思います。オーストラリアの映画業界はとても協力的で、資金集めやキャスティングのためのプラットフォームがあり、感銘を受けました。

そこからPremise TVの原型を着想したんだと思います。ただ、シンガポールを中心とした東南アジアの市場にはまだ新しすぎると思って、数年間温めていました。

>>>   Wan、相談されたときにはどう思いましたか?

Wan Ng (Wan):面白い、と思いました、純粋に。私はテックスタートアップや、企業のブランディングを専門としていて、いつも挑戦を求めています。映画業界については全く知らなかったのですが、もともとアート・エンタメ分野は好きで、挑戦しがいがあると思いました。

ファウンダーのWan(左)とRay(右)

ニッチな動画コンテンツ

>>>   Premise TVのキャッチフレーズはNext Big Hit (次のヒット作を)で、キュレーションのテーマはFresh & Edgy(過激で斬新)。野心的なニッチだと感じます。

Ray:映画は巨大産業です。ディズニー、ソニー、ワーナー、ピクサー・・・オンラインではNetflix。これら企業は数億人が喜ぶヒット作を生み出す必要があります。

その一方で、万人受けはしないけれど、優面白いアイデアを持っているクリエイターと、それを待ち望むハードコアのオーディエンスがいます。僕たちは、その両方の受け皿を作りたいんです。

>>>   セックスドールに入れ込む男性にスポットを充てた「Nami」という作品の第1話を拝見しました。テーマだけでも斬新ですね。

Ray:これを出資者に見せても、普通は拒絶されてしまいます。でもPremise TVにはコアなファンがいて、彼らが視聴者目線でしっかり評価してくれます。

インタラクティブ性と、連続性

>>>   Premise TVは、視聴者もコンテンツ制作に関わるということですが、これはどういうことでしょうか?

Wan:機能面から説明すると、まずクラウドファンディングです。Premise TVで資金調達の目標が達成できたということは、コアな視聴者に十分アピールしている証明だといえます。製作者の「作りたい」想いを、ファンの「観たい」が後押しする構図です。

それから、投票とアンケート機能もあります。ドラマの1話を見終わった視聴者に、続く2話の展開をアンケートで選んで、多数決で続編の方向性が決定される、という試みです。

>>>   面白い・・・ですが、クリエイターは口出しされるのを嫌がりませんか?

Ray:バランスをみながらやっていこうと思います。君の言うとおり、クリエイターは自分の作品内容に干渉されることを嫌います。一方で、需要が無いものを作り続けても生活できないこともわかっています。

Wan:すべての人々をハッピーにすることはできませんが、コミュニティのちからで前に進みたいと考えています。

>>>   ちなみに、資金調達に達成して、配信されたら終わり、ということですか?

Wan:いえ、Premise TVは連続的なプラットフォームです。シリーズ物であれば、最新話を見た視聴者が、次回作のクラウドファンディングで支援し、達成されれたら配信される、という・・・クラウドファンディングと配信のサイクルを生み出すつもりです。

>>>   お金と、作品の循環ですね。ユーザの積極参加を促す施策を教えて下さい。

Wan:Premise TVにはゴールドコインとシルバーコイン、2種類の通貨があります。

ゴールドコインは作品に対する出資や視聴に必要な、いわゆるお金です。

シルバーコインは、プラットフォームへの参加度に応じて付与されるロイヤリティポイントのようなものです。ログインやコメントなどを積極的に行うことで、自分の重要性も上がる、ゲーミフィケーション要素を取り入れようとしています。

ビジネスモデル

>>>   せっかくコインの話がでたので・・・収益化について教えて下さい。

Wan:初期段階においては、ブランドによるスポンサード動画と、ユーザーの視聴料です。

>>>   どちらが大きな売上になると見込んでいますか?

Wan:まずはスポンサーでしょう。でも、視聴料がそれを上回るよう、プラットフォームを成長させます。

>>>   クラウドファンディングでは利益を出さないのですか?

Ray:それは全く考えていません。調達した資金の95%が制作資金として充てられ、残りの5%はクレジットカード利用料などの管理・プロセス手数料です。

>>>   かなり寛大ですね、製作者に対して。日本のメジャーなクラウドファンディングは手数料として10~20%程度徴収しています。

Ray:一人のクリエイターとして、映画を世に出すことがどれだけ大変か、僕は知っています。せっかく集めた資金の多くがプラットフォームの取り分になってしまうのでは、本末転倒かな、と。コミュニティに関わる人を搾取したくないんです。

Way:公開された作品の配信でしっかりマネタイズします。

現状と、ロードマップ

>>>   クリエイターの獲得とオーディエンスの獲得。どちらに注力していますか?

Ray:むずかしい質問ですね・・・まさに今現在のことであれば、オーディエンスですね。鶏と卵の関係みたいなものですが、ユーザ(視聴参加者)がいないことには始まりません。

Wan:私も同感です。オンラインプラットフォームの初期段階において、ユーザ獲得は一番の命題です。

>>>   ローンチ(公開)の時期について教えてください。

Wan:4月にソフトローンチを控えています。限定的な作品をプラットフォームに乗せて、Premise TVのMVP(最小単位のサービス)をテストしたいと思います。

Ray:5月にはβ版公開です。作品数を増やしてソフトローンチの結果から修正を加えて、というイメージです。多くは語れません。隠しているわけじゃなくて(笑)。本当にどんな形になるかは直前まで修正をかけ続けることになります。

Ray:直前どころか、公開後もずっと修正し続けていそうですけどね(笑)。

>>>   では今後の展望について、お聞かせ下さい。そうですね、1年後と、3年後。

Ray:向こう1年間はとにかく視聴者とクリエイターの獲得ですね。

Wan:私はそれと平行して、データを見ながら機能の追加とチューニングをする日々です。

Ray:3年後は、遠い未来だなぁ・・・でも、タレントソーシングはできるようにしたいですね。例えば音響エンジニアが必要だったらPremise TV上で見つけられるような、LinkedInみたいに。

Wan:私はその頃までに、マーチャンダイズ展開できるようなヒット作が生まれるといいな、と。

インタビュー後書

Premise TVの話を初めてきいたとき、失礼ながら「儲かりにくそう」で「スタートアップらしい」とも思いました。

映画業界は成熟企業かもしれませんが、そこにスタートアップとして挑むのは、大変なことだと思います。オンラインでは既にNetflixやAmazonがやっているので、特に大変。

しかし、広く深く話をするごとに、この試みはファウンダーの二人にとって自然な流れであることがわかります。このコンビには、事業に対する愛と情熱と、冷静さを感じます。

クリエイティブへの情熱はRayが、ビジネス化する冷静さはWanが。

愛は両方とも持っている。

挑戦者の力になりたいと思います。

インターンたちと

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学生向け海外インターンシッププログラムSingapore Startup Hack Program (SSHP)
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