電通インターンシップ2016 エントリー課題の考え方:インターンシップブログ

スタートアップを支持する声が広がる昨今ですが(僕もその1人ですが)、そうはいっても大手人気は変わらないようです。中でも広告業界はとても華やかで、電通や博報堂には優秀な野心家が集うイメージがあります。

SSHPを始めとして関わった学生さんのエントリーシートを見ることもあるのですが、やはり電通のサマーインターンシップ(2017年7月にリンクが無効になりました。)は認知度がとても高いようで、今年は4人から相談を受けました。

とてもシンプルで面白い課題だったので、僕がどのように考えたのか説明したいと思います。

取り組んだ課題

ABCの3コースがあり、偶然4人とも「Planning & concept making」コースを選びました。テーマは「つまらないことを、おもしろく。おもしろいことを、真面目に。」

課題は2問ありました。

  1. 駅前で、子どもたちが募金活動をしています。しかし、あまりうまくいってないみたいです。彼らにアイデアを提供してあげてください。
  2. SNSで”1万いいね!”される投稿を考えてください。

求められる要素について考える

結論から言うと、これら課題を通して電通が見たいのは「洞察力」です。

肝心なことは、ちゃんと募集要項に書いています(リンクは削除されました)。わかりやすいところに。「君のツッコミが、未来をつくる」という大コンセプトと「つまらないことを、おもしろく。おもしろいことを、真面目に。」を合わせてみれば良いのではと考えることにしました。

僕の中の電通のイメージは、飛び抜けた発想を持つ一握りの人と、問題解決に向けたロジックが立つ人の2種類です。で、後者の方が数が必要なんだろうな、と。いずれにせよ、ぶっ飛んだ発想についてアドバイスなんてできませんから、後者(ロジック側)のアプローチを取ろうと思いました。これはコース説明の「あるテーマに対して洞察をし、真の課題をとらえ、アイデアを見つけ、コンセプトを立て、具体策を練る」という説明にも合致します。

課題1:募金活動をはかどらせるアイデアの考え方

以下のようなフレームで考えてみました。

ゴール:よりスムーズにお金を集める

考慮すべき要素:

  • 募金の大義名分は → ターゲットをどう絞るのか?
  • なぜお金を出すのか → 行動を促すために情に訴えるのか、メリットを打ち出すのか
  • いつ・どこで募金するのか → 募金しやすい環境にあるのか

大義名分:知らない人からお金を預かるというのは難儀な行為ですから、誰に声を届けたいのかは明確にしたいです。仮でもよいので「理由」をぶち上げます。ケニアの姉妹校に自家発電装置を届けたいとか、有望なアスリートだが貧困家庭に育つ級友の遠征費をまかないたいとか。

金を出す理由:募金に限らず、なるべく多くの関係者を幸せにするようなアイデアに人は賛同します。上の大義名分と絡めて、一般の不特定多数を対象にすべきか、それとも特定の人を対象にするのかが見えてきます。そして「いいことした」気分になってもらいたいのか「得した」気分になってもらいたいのかも考えてみました。これは見返りがあるインセンティブ型の募金方法を提案しようとした人がいたからです。

時と場所:身も蓋もありませんが、時と場所が良ければ、募金は集まると思います。駅前は募金活動の最もありがちな場所かもしれませんが、駅にいる人はどこかに向かっています。つまり時間的にも精神的にも余裕が足りないのです。なので、もっと適した場所を選ぶべきです。募金に適した場所には2種類あって、ひとつは「不特定多数の人が平和モードになる」場所です。例えば日比谷公園や、ディズニーランド。もうひとつは「お金を出す理由がある人が集まる(≒ターゲットが集まる)」場所です。たとえば犬の保護施設の維持費用を募りたいのであれば、代々木公園の充実したドックランの目の前で行うと良いかもしれません。
時間については、閉園間際は避ける。駅と同様、帰り支度を始めた人の心に余裕はないからです。

これらを総合的に考えて案が出るように促してみました。まず募金しなきゃならない事情があって、誰に募金して貰うかを考えて、場所を決める・・・というのが論理的な順序ですが、これはあくまでシュミレーションですので、「募金してもらいやすい場所ありき」で考えてもいいと思います。

課題2:SNSで1万いいね!を貰う方法

パッと思いついたのは「購入する」という方法。世の中にはいろんな商売があり、ソーシャルネットワークのフォロワーやお気に入りはお金で買えます。デフレ大国日本でもビックリするような低価格が取引されています。Twitterの10000イイね(Favorites)ならなんと8ドル!どうですか?!

・・・ダメです。これでは落とさると思います。この方法はロジックではなく瞬発的な発想寄りですが、全然突き抜けていません。僕のような中庸な考えを持つ人間の思いつき程度では、クリエィティブの門を吹き飛ばすような火力はありません。半端な飛び道具ではなく、ロジックで勝負するべきです。

この課題で問われるのは「リサーチ力」です。ではどんなフレームで考えれば良いのか・・・。

ゴール:SNSで1万いいね!をもらう

答えるべき疑問:

  • 実際1万いいねをもらった投稿はどんなの?
  • どのプラットフォームにするか?
  • フォーマットは?

実例調査:ぱっと思い浮かばないならば、調べてみればいいわけです。実際に1万いいねをもらったのはどんな投稿だったのか?できるだけ例を見て、カテゴリ分けしてみてください。性質なら面白い、カッコいい、スゴイ、可愛い・・・被写体ならセレブリティ、自然、動物、食事・・・などなど。バズりやすいコンビネーションを見つけます。

これは面白いとスゴイ(細かい)の合わせ技なのかな・・・およそ12万いいねついています。

プラットフォーム:Twitterだけではありません。FacebookでもInstagramでもいいです。それぞれの性質を見ながら、上記の実例調査を軸にプラットフォームを選びます。

フォーマット:テキストのみのベタ打ちで10000いいねは厳しい。伝播しやすいのは静止画か動画。

審査する方はプロ中のプロですので、あっと言わせることは難しいと思いますが、練られていれば細かい説明は不要だと思います。

 

結果、2名は課題選考を通過して面接に移ると連絡が来たので(あとの2人は報告がないのでわかりません*)たという連絡を受けたので、考え方としては間違ってないんだと思います。ただ、僕が提示したのはあくまで考え方のヒントで、実際に作成したわけではありません。そもそも広告のことなんて何一つ知りません。なるべく先方の考えを想像して、寄り添ってみただけですが、そこが分かれ道になるのではないかな、と思います。

相手が求めることをどこまで理解・追求できるか。

これは過去2年、シンガポールで海外研修事業を行う中で生じた命題の1つで、研修生に常に問いかけています。

* ご指摘を受け、一部表現を変更いたしました。ありがとうございます。

ロゴ出典:https://www.dentsu.com/