大学生とマーケティングについて考えるシリーズ。
第1回は、購入プロセスの全体像について
第2回は、購入プロセスの入口、発見の全体像について考えました。
今回は、調査(Research)について説明します。
見慣れたフロー図からはじめましょう。前回のエントリーでは、発見されることが何よりも大切だと書きました。なにせ、知らないものは買う手立てがない。
今回は、発見の次、調査の段階について説明します。
ちら見 (Glance)
調査の初期ステップを「ちら見」と呼ぶことにしました。辞書アプリを購入した例だと、「発見」はSmart Newsで辞書リリースに関する見出しを見つけた状況。そして「ちら見」は、タイトルをタップしてBuzzfeedの記事を表示させ、それを読む段階を指します。
ちら見とは、気になった情報(商品)の概要を知るための初期動作とも言えます。ここで潜在顧客の興味をつかめないと、購入につなりません。
言葉が表すように、人が「ちら見」にかける時間はとても短いです。この段階で重要なのは、お客様が求める要素を、簡潔に、わかりやすく伝えることです。その要素とは
- Product:商品説明です。お客様は、内容が分からないものに対してお金を払いません。例えばコンサルティングのスタートアップがサービスを宣伝したいとして「コンサルティングします」と言っただけ、誰も興味を持ちません。「最終的には社内で実行することができるSEO(検索エンジン最適化)戦略を、担当社員に対して、30日かけて実践教育する」といった、クリアな説明が必要になります。
- Result:お客様にとって、サービスや製品を買うことは、それ自体が目的ではありません。化粧品を買うのは美しくなりたいから?ライザップに通うのは体脂肪率を下げたいから?・・・いい線いってますが、まだ足りないです。美しくなる、体脂肪を下げることは指標(目標)ではありますが、目的ではありません。目的とはもっと根源的なもの・・・たとえば「チヤホヤされたいから」です。あからさまに煽るのか、絶妙にくすぐるのかは別として、ここを刺激してあげましょう。上のコンサルティングの例では、「トップキーワード3つで上位表示を達成し、カテゴリ内の売上を30%伸ばします」などでいかがでしょうか?
- Uniqueness:製品は理解した。結果も見える、ここでお客様の頭に浮かぶのは、「この製品じゃないとダメなのか?」という疑問です。できれば次のステップ「精査」には進んでもらいたくない。なので、セールスポイントを明らかにします。まずはサービスの切り口。「個人経営の飲食店向け集客法」「東南アジアの超富裕層向け旅行」など、他社が及ばない専門性を打ち立てると、引き立ちます。次に、スタッフや、会社自身の特異性ですね。コンサル業界で10年やってます、では説得力につながりません。「〇〇大学現役生が直接指導」しますは、説得力があるけど、まだ弱い。「現役慶応大学医学部生による、慶応大学医学部受験生のための個別指導」だと、それこの上なく絞り込まれています。もちろん絞りすぎるとマーケットも小さくなってしまうので、注意が必要です。
まずはこれら3つの要素について、わかりやすく説明しましょう。中高生が、すんなり理解できる程度に。ブログ記事を書くといい練習になります。一般的な記事は、タイトル、見出し、小見出し、本文の構成になっているため、論理的にも理解しやすいです。
精査
「発見」→「ちら見」のあと、直ぐ商品を買う場合もありますが、そこまで衝動的にはなれなかった、しかし興味は途切れていない・・・。
こういう消費者が次にとる行動が「精査」です。この段階で企業がしておくべきことは、最低限のSEOです。
精査には沢山の種類がありますが、大まかに分類してみましょう。
検索エンジン → 製品ページ
伊坂幸太郎さんの小説「モダンタイムス」の一節。
「人は知らないものにぶつかったとき、何をするか?検索するんだよ。」
現代は、簡易調査の手段で溢れていますが、Googleの検索エンジンが代表例です。大学生でGoogle検索を使ったことがないひとは、まずいないでしょう。たとえGoogleのホームページを見たことがなくても(それも稀だと思いますが)、例えばiPhoneやMacのSafariブラウザのデフォルト検索エンジンはGoogleです。期せずして検索エンジンを使っていることも多いのです。
「ちら見」の結果として残る情報は、先述のproduct, result, uniquenessです。最低限のSEO施策をとっていれば、検索エンジンに製品名をベタ打ち検索で製品ページに行き当たります。SEOについては沢山の方がブログ記事を書いていますので、基礎的なものを読んでみて下さい。製品ページのコンテンツについても、ここでは触れません。
代わりに1つ大事なことを。製品ページから直接、あるいはワンステップで購入できる仕組みを作っておきましょう。
僕が購入した辞書はiPhone アプリでしたが、経路はSmartNews → Buzzfeed → 辞書の紹介ページの順にでした。ここまではよかったのですが、このページからApp Storeに飛ぶリンクが貼られていなかったのです*2。記事のおかげか、FBで2000以上のいいね!ついているのに、とても残念。
*2 もしかすると、実はリンクが貼られていて、僕が見つけられなかっただけかもしれせん。が、やはりそれでも、リンクはわかりやすく貼るべきだという教訓になります。
大事なことなので繰り返します。購入の意思を持った顧客を置いてけぼりにしないように。
検索エンジン → 第3者のサイト(ブログ・ニュース記事含む)
企業としては、顧客を検索エンジンから直接製品ページに導入したいところですが、なかなかそうはいかない場合もあります。
仮にPrepared Slidesの研修事業であるSSHPがメディアに紹介されたとします。しかし学生は、Singapore Startup Hack Programという正式名称はおろか、SSHPという略称すら覚えていません。
結果「海外インターンシップ」などの曖昧な検索をすることになります。「海外インターンシップ」は、業界ではなかなかのビッグキーワードです。
製品ページが1ページ目に表示されない場合・・・辛抱強く2~3ページくらいはスクロールしてくれる人もいますが、購入率はグッと下がります。人は検索エンジンの結果を、盲目的に信じてしまう傾向があるようです。
・・・脱線しそうなので、強引に話を戻します。
あいまい検索の結果として、あるいは製品ブログを閲覧した後に、第3者が書いてくれた紹介ブログにたどり着く人もいると思います。
基本的にはありがたいことです。ただ、スポンサード記事ならともかく、紹介記事の執筆内容は、第3者に委ねられます。商品ページや会社ページにリンクを貼ってくれない場合もあるでしょうし、間違った情報や、好ましくない評価が下される場合もあります。意図せず商品を貶めてしまうことだってありえます。
やはり、最低限の門構えは必要だと考えます。
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できればこの段階で購入に持っていきたいところです。でも、ここで取りこぼしても、まだすくい上げられる場合もあります。難しいですが・・・次回は最後のステップ「検討」について書きます。
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