SSHPの研修生はホステルで共同生活をします。まるごと貸しきるわけにはいかないので、一般の滞在者もいます。短期の旅行者に加えて学者、学生、料理人、起業家、中には銀行員など、さまざまです。
宿に戻ってチームメイトや一般の滞在者といろんな話ができることはホステルぐらしのメリットですが「何を話したらいいのか分からない」と相談されることがあります。
以前、世界と対話したいなら、まずは日本のことを考えようというコンテンツを書きましたが、興味を無理やり広げることはできません。背伸びをせずに既に関心があることから考えを深めればよいのです。1つ例を出してみたいと思います。
多くの学生にとって、大学生活における最大の関心事は就職活動です。近年は経団連が試験的に就活の解禁日を変動させ、でも事前に実質内定が出ているケースもあったり、その場で内定を出す条件としてその他選考中の企業を諦めるように迫れれたり・・・なかなか翻弄されているようです。
さて、この一文、
近年は経団連が就活の解禁日を変動させ、でも事前に実質内定が出ているケースもあったり、その場で内定を出す条件としてその他選考中の企業を諦めるように迫れれたり
日本の大学生にとっては当たり前に知っていることです。しかしこんなふうに
The Japan Business Federation has altered the opening day of job seeking period every year recently. But in fact many companies give unofficial offers before the period. Some companies even demand prospects to give up other companies in exchange for the job offer on the spot.
直訳はおろか、意訳しようとしても、パッと理解してもらえないと思います。理由は、背景や前提の説明不足。「経団連」「解禁日」「内定」といったこれらの単語は決してユニバーサルなものではありません。ましてや大手企業が新卒採用活動の足並みを揃えるといったことは奇異に思われるのです。
そして、非常識に思える海外の常識は、話題として盛り上がります。しかも当の本人ですから、臨場感がある。僕ならこんなふうに一般化します。
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Japan’s job market for new graduates is open for a limited time…
Big companies “officially” start giving job offers to senior students in June and most of the offers will be made during the month…yes, 9 months before they graduate. But this is not to say they are too early. In fact, they are late. Some SMEs give offers 12-14 months in advance of graduation, in other words, during the studens’ junior year.
…because of a historical reason.
The reason stems back to the nation’s high growth period when companies rushed into securing graduates from prestigious universities, even junior or sophomore students. This was seen as a social issue because students with job offers stopped studying and enjoyed a laid back life without having to worry about their future. Thus Keidanren (the Japan Business Federation) prohibited member companies from recruiting students until the opening time comes. It is more like a gentlemen’s agreement but not a law.
Tokyo is jacked by Young-In-Black
So, as a result, you will see a bunch of young folks, women and men, in a dark suit during the peak period (June this year) of job seeking. You may wonder if a famous person passed away or something, but no. This is the proper attire to walk on the safe side when visiting companies. Some companies actually don’t require it, but this tacit “dress code” is still pervasive.
It’s tragic they have to be in a dark suit and a tie during the most uncomfortable, humid rainy season of the year. Why do they still dress like that even if they are not required to do so? Well, I assume students think big companies prefer smart and modest ones in the herd.
Everyone start working in the company on April 1st
ALL new employees fresh out of college start working for the companies from April 1st, which is the beginning of the school/fiscal year in Japan. The school year begins on April 1st, so their first day of the first real work will begin on April first. Very systematic. Actually, the beginning of the April is another time of the year you perceive a bunch of “Young-In-Black.”
In a way, the 1st and 2nd year can be considered as a training period while they receive salary. This is a part of the life time employment concept, which is not as prevalent as it used to be, but still very popular….
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考え方のヒントと、注意点について書きます。
事実を捉える
その時点の事実というのは原則として変わりませんが、意見や感想は状況によって大きく変わります。極端な例を出しますと、「日本の就活システムはおかしい」という声を聞きますが、その多くは就活が上手くいかなかった学生の意見です。、第1希望から内定が出た人からはあまり多く聞きません。
聞き手には、色々な事柄を判断するための事実を提供して、そこから自分が思う意見を言うように心がけます。
話の展開には、縦(Why)と横(So)の関連を意識する
最初に日本の就活は期間限定であるという情報を提供しました。ここで相手が食いつけば「どうしてそうなったのか」という質問が来ます。そこで経団連主導の現状や、そうなる原因の1つである高度成長期・青田買などのトピックを用意しておいて、必要に応じて説明すればいいのです。
深掘りが終われば、横に動いてみてください。「6月に東京は黒スーツの集団に占拠される」とは、なんだかキャッチーですが、ピンと来ない人もいるかもしれません。なので、その理由として集団選考のために求職者が集中すること、みんな無難なダークスーツを着ていることの説明を準備しておきます。
「期間限定」→「同時に動く」に続く展開が、「4月1日の一斉入社」・・・という流れです。
最後に、Linkという破線で示している箇所がありますが、これが多いほど縦横で内容が関連していて、イメージを定着させる効果が増します。ただ、最初からLinkを意識し過ぎると図が複雑になってしまいます。ラッキーな副産物くらいに考えておいてください。
暗記しない
ネタにするために、すこし皮肉っぽく、口語で書いていますが、暗記しないで下さい。暗記しちゃうと「話す」から「読みあげる」行為になり、コミュニケーションのレベルが下がります。
いかがでしたか?きれいに図式化する必要はありません。最初は箇条書き程度から始めて、知っているようで知らなかったことを認識して、海外の人と盛り上がるネタができると、楽しいですよ。
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