スタンスをとる(意見を表明する)意味と、その方法:インターンシップブログ

SSHPでは折に触れて「スタンスをとる」(=自分の意見を表明する)こと重要性を説いています。

日常会話でも

海外を目指す学生が知っておくべき日本のトピック:インターンシップブログ

会議の場でも

会議で中立になるリスク:インターンシップブログ

最初の会議に備える「想像し、具体的に考え、伝える」:インターンシップブログ

最近、この考えがますます強くなってきました。

特にそう思うようになった事例をふまえて、僕なりにスタンスをとる方法を考えてみます。

精神科医と宗教

SSHPでお世話になり、現在日本の大学に留学しているシンガポール人の友人とお話する機会がありました。

なにか話したいことがあって会うのではなく、たまにふらっと連絡して、どちらからともなく糸口をみつけて、議論になる。

友人は感情を制御するためにカウンセリングに通っていて、非常に高額だが効果があると言います。

興味を持った僕は、あれこれと質問しました。

  • それまで何箇所くらい試したのか?
  • それまでの医者は何が良くなかったのか?
  • どんな状況で何を話すのか?
  • どんなテクニックを授けてくれるのか?
  • どんな薬が処方されるのか?
  • 1セッションの料金は?

回答は省略しますが、友人は丁寧に答えてくれました。

あくまで僕が受けた印象ですが、内容よりも、友人が「この治療法が効果がありそうだ」と信じていることのほうが重要だと感じたので、僕は言いました。

精神科ってさ、効果だけ見れば宗教に通じるところがありそうだね。信じるものがあれば、それをきっかけに世界をポジティブに見られるようになり、事態が好転する、のような。

これに友人は猛反発します。

ぜんぜん違う。精神科は科学的なアプローチだけど、宗教は妄信的。そもそも私は宗教が嫌い・・・私が見てきた牧師なんてひどいものだった。

これら2つの主張(意見)にはズレがあります。僕は「どちらにしても信じられるなら心の安定に繋がる」と言っているのに対し、友人は「宗教は信じられないから、精神科と同列にならない」と主張します。

同じ土俵で議論が成立しているわけではないのです。

ですが、このズレに気付いた上で、かつ冷静さを失わなければ、とても楽しく議論できます。

その日は想像を越えていろんな話ができました。個人的な幼少期の宗教との関わり方、宗教に対する国のアプローチ、カトリックとプロテスタントの違い、時代とともに変わる心の安定を求める方法などなど・・・。

議論に決着はつきませんでしたが、すくなくとも不完全燃焼ではありませんでした。

議論の目的は相手を屈服させることではなく「今自分はこう考えている」と理解してもらうことにあります。このために、スタンスをとることは欠かせません。

文明の衝突

話題を変えます。

SSHP修了生の内定先で出された課題図書の一冊が、とても懐かしいタイトルでした。

「文明の衝突」サミュエル P. ハンチントン著

1996年に出版されたベストセラーで、当時の僕は難解さに挫折しました。現在、再挑戦中です。

その主張は2017年現在でも通用するどころか、重厚かつ細心で、メチャクチャ引き込まれます。この書籍の主論はについて:

冷戦後の「国際政治の中心をなすきわめて危険な特質は、異なる文明を背景とするグループ間の対立であろう」

このために、様々な地域の歴史、政治、経済などの観点から深く分析しています。

内容もすばらしいのですが、僕が感銘を受けたのは、考え抜いた主張を発表する勇気です。

この本は出版から21年が経過しています。大筋で揺るがなくても、細部では当然誤差が生じます。昔なされた予測が、現在の姿とは違う場合もあります。

初見で読めば「いやいや、こうなるって書いてるけど、今の現実は全然そんなことないじゃん」と批判されるかもしれません。書籍として出版されるなら、なおさらです。

批判覚悟で、信じる主張をぶち上げる研究者や作家の勇気は、そこに到るまでの研鑽を含め、敬意に値します。

スタンスをとることで、それにたいする共感、あるいは反感の意見が集り、進化していきます。最先端は、勇気ある主張の元に生まれると僕は考えます。

スタンスをとる技術(初歩)

とはいえ、僕は学生の皆さんに対して世紀の論説を世界にぶち上げろ、と言いたいわけではありません。

理解して頂きたいのは、必要な状況でスタンスを取ること自体が大切なのであり、それはだれでもできるということ。初期段階では才能も信念も不要です。(ただし、深く潜るうちに、いずれ信念は必要性に気づくかもしれません。)

例えば

今後日本は積極的に移民を受け入れるべきか

というお題があったとします。

判断できないなら、どちらでもいいから一方を選んでください。

仮に「受け入れ賛成派」を選んだら、受け入れる理由(人口低下にともなう労働力不足など)や、その影響(ビザ、職業訓練、言語、など)を片っ端から考えます。

考えられるだけ書き出したら、反対派が持ち出す意見を想定しましょう。

例えば、治安の悪化や、税負担など。

これだけで、対立する2つの視点で事案を捉える準備ができます。

この上で、あらためて自分が「今のところ」気に入る方を選べばいいのです。

繰り返しますが、ここまでは、誰にでもできる技術です。

このさきは、個人の好み・感情・信念など、客観事実だけでは測れない要素が出る領域です。

就活でも活きる

議論や読書など、自分とは縁遠いと感じる学生のために、就活に関連した話題を。

スタンスをとることは、就活においても有益、というか、納得行く就活を送った人は、みなさんスタンスをとっています。就活生の言語に変換するならば「軸を持っていた」ということになります。

寄稿エントリー:就活を勝ち抜くための自己分析 ~ MARCH就活生のバイブル

業界を決める

どの業界に行きたいか分からない人、いますよね。

迷っている人が最初にすべきことは、大雑把でいいので「やりたいこと」と「やりたくないこと」を書き出すことです。

例えば「海外でビジネスをしたい」「お客様と直接関わりたい」「飛び込み営業はしたくない」「残業したくない」などなど。これら好みがあなたの「暫定的なすあんす」を形成します。

つぎに、IT、自動車、医療、人材・・・といった、業界をリストアップして、想像できる特徴を3つ、箇条書きして、「暫定的なスタンス」と比較して、近いか遠いかを考えてください。

自分の考えをまとめたら、次は人に会いましょう。気になった業界。の説明会に顔を出し、OB訪問で中の人に時間を頂き、正直に質問して、自分の認識とのズレを確認します。(自分に合いそうな業界だけでなく、良くわからない業界も見ておくことをオススメします。)

たとえOBや知り合いがいなくても、業界と求職者のマッチングサービス・アプリがあります。現代の日本の就活インフラを使えば、OB訪問ができない理由はありません。

先輩の話と自分の前提を比較して、業界の理解度を深めた上で、「やりたいこと」が多くて「やりたくないこと」が少ない業界(あるいは企業)、それがあなたが進みたい業界です。

単純すぎると感じるかもしれませんが、業界を絞れないのであれば、これくらい単純に始めたほうがいいのではないかと思います。

面接にて

SSHP修了生による寄稿ブログのなかで、「自分の意見を口に出す」という一節がありました。

寄稿エントリー:総合商社の面接3つのポイント ~ MARCH就活生のバイブル

これは「あなたは弊社の事業をどのように考えていますか?」という質問に対してスタンスをとった、ということです。

わかりません、では済まさないです。

スタンスは変更可能

さいごに重要なポイントを。

一度スタンスをとると、後に引けないと考えてる人がいるかもしれませんが、それは誤解です。

特に個人的な見解については、スタンスを変更することは問題ないと思います。

朝令暮改が過ぎると信用をなくしますが、議論や熟考の末にスタンスを変更することは、未知に対する柔軟な姿勢であり、成長へのステップだと思うのです。

「おまえそんなこと言って無かったじゃん」とからかわれても「しっかり考え直すとこうなった」でいいじゃないですか。

あなたは違うステージに進んでいます。

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